心タンポナーデが進行すると、脳や全身臓器への血流が途絶えるため、患者は激しい胸痛や息苦しさ(呼吸困難)、冷や汗、顔面蒼白、意識混濁を訴えます。その中で、診断の重要な鍵となるのが古典的な身体所見である「Beckの三徴(ベックのさんちょう)」です。
Beckの三徴とは、以下の3つの特徴的所見を指します。
- 血圧低下:心拍出量の低下に伴い、全身へ血液が送り出せなくなる。
- 頸静脈怒張:右心房への血液の戻りがブロックされ、首の静脈がパンパンに腫れ上がる。
- 心音微弱(心音減弱):心臓と聴診器の間に多量の液体が介在するため、心音が遠く小さく聞こえる。
さらに、息を吸った(吸気)瞬間に収縮期血圧が10mmHg以上大きく低下する「奇脈(きみゃく)」も極めて重要な所見です。脈拍を触れていると、息を吸うタイミングで脈が極端に弱くなる、あるいは触れなくなる現象として確認されます。