作中で両津が並べていたのは、主にフェラーリの歴代スペチアーレ(特別限定車)である「F40」や「F50」、そして量産ミッドシップモデルの「F355」「348」などでした。
麗子から見れば「どれも真っ赤な車体で、平べったくて、リアウイングが付いた派手なスポーツカー」に過ぎません。しかし、マニアである両津にとっては、ツインターボとV12自然吸気の違い、角張った80年代リトラクタブルライトの造形と90年代の流線型デザイン、車体構造のカーボン素材の違いに至るまで、全くの別物です。
両津が放った「バカ野郎!どこが同じだ!」という猛反発は、「外から見れば同一に見えても、愛好家にとっては宇宙ほど異なる」という、あらゆるサブカルチャーに通底する真理を的確に突いていました。作者である秋本治氏自身が無類のメカ・ミリタリー愛好家であるからこそ描けた、リアルなオタクの悲哀と熱量がそこに凝縮されています。