ネット上の掲示板やSNSでは、時折「田原健一はギターが下手なのではないか」という心ない書き込みを目にすることがあります。その論拠の多くは「長尺の超絶早弾きソロを弾かない」「ハードロックのような派手なタッピング奏法をしない」といった、狭い技術観に基づいた誤解に起因しています。
しかし、スタジオミュージシャンや音楽プロデューサーの間での評価は正反対です。田原健一は日本のポップス・ロック界における「最高のバッキングギタリストであり、アンサンブルの建築家」として極めて高いリスペクトを集めています。
田原の真骨頂は、「引き算の美学」にあります。隙間なく音を詰め込むのではなく、桜井のボーカルの音域やストリングス、キーボードの帯域を計算し尽くし、絶妙な「隙間」にアルペジオやコードボイシングを差し込んでいきます。『Tomorrow never knows』のイントロで鳴り響く哀愁漂うフレーズや、『名もなき詩』のバッキングで聴かせる乾いたアコースティックとエレキの調和は、田原の緻密なアレンジメントなしには成立しません。
使用する機材へのこだわりも徹底しています。フェンダーのヴィンテージ・テレキャスターやジャズマスターのほか、ギブソンES-335やレスポールを曲調に応じて的確に持ち替え、アンプにはMatchlessやDivided by 13といったピュアな反応を持つチューブアンプを愛用しています。ピッキングのニュアンスひとつで歪みとクリーンを行き来させるそのタッチコントロールこそが、本物のプロフェッショナルが認める技術の証明です。