いわき市石炭化石館の見どころを語る上で外せないのが、「太古の地球史(化石)」と「近代日本の産業史(石炭)」という、まったく異なる2つの巨大テーマが奇跡的な調和を遂げている点です。一般的な博物館の枠組みを遥かに超えた没入感を味わうことができます。
第一のハイライトは、エントランスを抜けた先に広がる「化石展示ゾーン」の中心に君臨するフタバスズキリュウ(学名:フタバサウルス・スズキイ)の復元骨格化石です。1968年、当時高校生だった鈴木直氏によっていわき市内の大久川河岸で発見されたこのクビナガリュウは、日本国内で初めて発見された首長竜化石として学術的にも極めて高い価値を誇ります。全長約6.5メートルにおよぶ優美かつダイナミックな骨格が天に向かって弧を描く姿は、訪れる者の視線を一瞬で奪います。周囲を取り囲む白亜紀の恐竜やアンモナイトの展示群も圧巻の密度を誇ります。
そして第二の白眉が、エレベーターを使って一気に地下の世界へと降り立つ常磐炭田の模擬坑道体験です。エレベーターの扉が開いた瞬間、そこには坑道特有の湿り気を帯びた空気と、薄暗い坑内を照らすカンテラの灯りが忠実に再現されています。江戸末期の手掘り時代から、近代の機械化、そして昭和の採炭最盛期に至るまでの変遷が、精緻な等身大人形や実物採炭機械(ドラムカッター等)の巨大な金属音・動作音とともに体感できます。炭鉱夫たちの過酷な労働環境と、生活を支え合ったエネルギーの現場が放つ生々しいリアリティは、思わず息を呑むほどの迫力です。
館内の標準的な所要時間は約1時間30分〜2時間です。じっくりと解説パネルを読み込み、屋外の体験コーナーまで楽しむ場合は2時間30分〜3時間程度を見込んでおくと、焦ることなく満喫できます。