チケット一般発売や直前リセールで頻繁に目にする「注釈付き指定席」や「ステージサイド席」。一般に敬遠されがちな見切れ席の真相を追究すると、代々木特有の興味深い二面性が浮かび上がります。
構造上、メインステージが渋谷口側(南端)または原宿口側(北端)のエンドに設営された場合、スタンドの最もステージ寄りの区画は、メインビジョンの映像やステージ奥のセットが構造物の陰になり見えなくなります。これが「見切れ」の理由です。しかし、現地に足を運んだファンの手記やSNSでのリアルな証言を拾い上げると、意外な満足度の高さが確認できます。
「正面の巨大モニターは見えなかったが、サイドステージの端まで推しが歩いてきた瞬間、アリーナ中央列よりも圧倒的に近い数メートルの距離で目が合った」「舞台袖へ捌ける直前の素の表情やスタッフとハイタッチする瞬間まで丸見えで、むしろ通常席以上のプレミアム感があった」
このように、ステージセット全体を俯瞰したい人には不向きであるものの、演者本人の生々しい存在感を感じたい熱心なファンにとっては、コストパフォーマンス抜群の穴場席として機能しています。
一方、かつて音楽関係者やファンの間で賛否が分かれていたのが音響の評判とネットの反応です。元々が水泳競技やバスケットボールなどのスポーツ施設として建設された歴史的経緯から、「コンクリートの反響音(エコー)が激しく、低音が回ってボーカルの歌詞が聞き取りにくい」という悪評が定着していた時代がありました。
しかし、2021年の大舞台を前に実施された大規模耐震・改修工事を経て、音響環境は劇的に改善されています。天井および壁面各所に最新の高機能吸音パネルが緻密に配置された結果、現在の音響特性は国内有数のアリーナ水準へとアップデートされました。2024年から2026年にかけて開催された有名ロックバンドやボーカルグループの公演レビューでも、「以前のような不快な音の反響はほぼ解消され、高音の抜けと低音の輪郭がクリアに分離して聴こえる」「アリーナクラスとしては非常に聴きやすい良質な音場」と、高評価が定着しています。ただし、2階スタンド最後列のコーナー付近など、すり鉢の上端部では若干の反響だまりが生じやすいため、重低音重視のライブでは耳栓等のチューニングがあると安心です。