「箱入り娘」という表現は、単に甘やかされて育った女性を揶揄する言葉ではない。本来は、大切な宝物を傷や埃から守るために頑丈な桐箱に納めて保管するという、日本古来の習慣に由来している。古くから道具や美術品を愛でてきた日本の伝統において、「箱に入れる」行為は最上級の愛情と尊重の証であった。
日本語・慣用句の歴史を振り返ると、江戸時代の町人文化や商家において、跡取りである娘を悪友や世間の荒波から守り、大切に養育する様を表すポジティブな描写として用いられ始めた。出版業界が発展させた近世の戯作や草双紙などでも、高嶺の花としての存在感を際立たせるレトリックとして重宝されている。