大量発生の報道が過熱した際、SNSを中心に「大群が海を越えて日本本土を襲うのではないか」というパニックが広がりました。しかし、科学的な生態データと気象条件を照らし合わせる限り、サバクトビバッタ 日本飛来の可能性は事実上ゼロと断定できます。
まず検証すべきは、ユーラシア大陸東端に位置する中国の防壁です。サバクトビバッタ 中国への影響については、当時インドやパキスタン国境に迫った群れが中国西部の新疆ウイグル自治区やチベット自治区へ侵入するのではないかと激しい議論を呼びました。しかし、群れの前に立ちふさがったのは、平均標高5000メートルを超えるヒマラヤ山脈とカラコルム山脈でした。
サバクトビバッタは外温動物であり、気温が低下すると筋肉の活動が停止します。標高数千メートルの氷点下環境や酸素濃度の薄い高空を越えることは生物学的に不可能です。迂回ルートとして考えられたミャンマー経由の雲南省侵入シナリオも、高温多湿な熱帯雨林環境がバッタの生存に適さず、大群を維持したまま中国の中央平野部へ到達することはありませんでした。
仮に船舶や航空機のコンテナに数匹が紛れ込んで日本国内に持ち込まれたとしても、日本の高温多湿な気候、土壌環境、そして四季の降雨パターンはサバクトビバッタの繁殖サイクルと完全に矛盾します。卵が土壌中の過剰な水分によって腐敗・死滅するため、定着して大群を形成する条件は一切整っていません。「日本襲撃」の言説は、地理と昆虫生理学を無視した典型的な風評被害に過ぎないのです。