日本国内では伝統文化や国防の標識として当然視されている旭日旗が、なぜこれほど国際摩擦を引き起こすのでしょうか。旭日旗がなぜ問題とされるのかを紐解く鍵は、近隣諸国の歴史的記憶と、メディア空間における情報伝播の構造にあります。
韓国における批判の主な理由は、明治から昭和前期にかけての軍国主義や植民地支配の記憶と旭日旗が直接結びつけられている点にあります。旧日本軍の侵略行為を象徴する「戦犯旗」であるという言説が韓国内の教育やメディアで定着し、旗を見ること自体が国民感情を害するという主張がなされています。
しかし、取材現場の記録や外交史を綿密に追うと、重要な事実が浮かび上がります。戦後数十年間、旭日旗に対する大規模な抗議活動は国際的にも韓国国内でもほとんど見られませんでした。実際、1998年と2008年に韓国海軍が主催した国際観艦式では、海上自衛隊の護衛艦が自衛艦旗(旭日旗)を掲げて韓国の港に入港しましたが、当時は政府レベルでもメディアでも大きな騒動には発展していません。
世論が激変する決定打となったのは、2011年サッカーアジアカップ日韓戦での出来事です。ゴールを決めた韓国代表選手が猿の物真似パフォーマンスを行い批判を浴びた際、「会場にあった旭日旗を見て腹が立った」と言い訳をしたことがSNSやネットメディアで拡散。これを機に、民間団体やネットユーザーを中心に旭日旗排斥運動が急速に組織化されました。
以降、海外アーティストのアルバムジャケット、世界的ブランドのファッションデザイン、さらにはカニの殻や朝日を描いた日常のロゴマークに至るまで、「光条を持つデザイン」全般へのバッシングが過熱する現象が続きました。国際大会におけるオリンピックでの旭日旗持ち込み問題でも激しい応酬が繰り広げられましたが、国際オリンピック委員会(IOC)は「個別の事案ごとに判断する」としつつも、旭日旗そのものを一律に禁止物品と指定することはしていません。