全国放送のニュースで「関東地方のダムで貯水率が低下、農業用水の取水制限を検討」といったテロップが流れると、ネット上では「神奈川も水が止まるのか」「スーパーでペットボトルの水を確保しなければ」という声が散見されます。しかし、ここには地理的・インフラ構造的な決定的な誤解が存在します。
東京都や埼玉県、千葉県の水道水の約7割から8割は、利根川・荒川水系に依存しています。そのため、群馬県の山間部にある矢木沢ダムや下久保ダムなどで雨が降らないと、即座に首都圏の取水制限問題へと発展します。
対照的に、神奈川県の水瓶は相模川水系と酒匂川水系の2大独立水系でほぼ100%賄われています。利根川水系からの取水は行っておらず、丹沢山地や富士山麓、道志川の広大な水源涵養林が蓄えた雨水がダイレクトに県内ダムへと流れ込みます。
丹沢山地は日本有数の多雨地帯であり、年間降水量はおよそ2,500〜3,000ミリメートルに達します。さらに、2000年に本格運用が開始された宮ヶ瀬ダムの完成によって、神奈川県の保水能力は飛躍的に向上しました。過去の昭和40年代〜50年代に神奈川を襲ったような深刻な給水制限の記憶を持つシニア層もいますが、現代の導水・貯水ネットワークは当時とは根本的に強靭さが異なっています。
「東京や北関東が渇水だからといって、神奈川県も同時に水不足になるわけではない」という地理的事実は、無用なパニック買いを防ぐ上で必ず知っておくべき基本知識です。