記者がこれまで取材してきた複数のコンプライアンス違反事例には、明確な共通項が存在します。それは「些細な不正の放置が、やがて組織ぐるみの大規模不祥事へと拡大する」というメカニズムです。
ある大手製造関連企業では、納期の圧迫から現場担当者が製品の検査数値をわずかに改ざんしたことが発端でした。当初は「納入先には実質的な害がない」と正当化されていましたが、幹部がその事実を把握しながら「今さら公表すれば株価が下がる」と隠蔽を選択。結果として、内部告発が外部機関へ持ち込まれ、メディアの知るところとなりました。記者会見で深々と頭を下げる経営陣の背後には、取引先からの契約解除通告と、巨額のリコール費用が重くのしかかっていました。
取材で得られた現場社員の手記には、次のような生々しい証言が記されていました。
「おかしいと声を出せば、社内で異分子扱いされ左遷される空気感があった。『皆のために黙っていろ』という無言の同調圧力が、誰も立ち止まれない状況を作り出していた。」
SNSや口コミサイトが発達した現在、社内の不正や隠蔽を完全に封じ込めることは不可能です。密室で行われた不正ほど、外部に流出した瞬間の爆発力は凄まじく、企業の不祥事と社会的信用は一瞬で崩壊します。