1990年代初頭、日本で確固たる人気を築いていた彼が突如としてロサンゼルスへ拠点を移した決断は、当時の映画界に小さくない衝撃を与えた。日本人俳優が海外作品で演じる役柄といえば、ステレオタイプなビジネスマンや謎めいた武術家に限られていた時代である。
そんな厚い壁を打ち破る足がかりとなったのが、1995年の国際的アクション大作『クライング フリーマン』だった。クリストフ・ガンズ監督がメガホンを取り、マーク・ダカスコスら国際色豊かなキャストが集結した本作で、加藤はヤクザの若頭・花田龍二役を熱演。ハリウッド映画界特有の過酷な撮影現場で、身体を張ったスタントと冷徹な眼差しを披露し、現地のクリエイターたちに強烈なインパクトを残した。
「英語が話せるのはスタートラインに過ぎない。重要なのは、その場で監督の要求をどう立体化できるかだ」――当時の経験は、彼のその後の演技論の強固な土台となっている。