医療従事者養成校の学生やフィットネス現場の指導者の間で、毎年決まって繰り返される光景があります。理学療法士・作業療法士の国家試験(例年2月下旬実施、合格率は概ね75〜85%前後を推移)を控えた受験生コミュニティでは、直前期になると「起始停止が覚えきれずにパニックになっている」「点数が伸び悩む」という悲鳴がSNSや掲示板上に溢れます。
専門学校や大学で教鞭を執る解剖学講師や、臨床現場で新人教育を担当する指導者の手記・証言からは、共通した構造的課題が浮かび上がってきます。
「国試の基礎医学分野で失点する学生の9割は、単語帳を使って『筋肉名=骨の突起名』を1対1のテキストとして暗記しようとしています。しかし実際の出題では、関節角度の変化に伴うモーメントアームの変化や、複合動作時の主動作筋と拮抗筋の関係が問われます。丸暗記した用語は、少し切り口を変えられただけで頭から抜け落ち、臨床に出た瞬間にまったく使い物にならなくなってしまうのです」(都内回復期リハビリテーション病院・リハビリ統括主任談)
現場で支持を集めるベテラントレーナーも同様の指摘を口にします。「クライアントに対して『広背筋を使ってください』とキューイングを出しても伝わりません。指導者自身が『骨盤のラインから上腕の内側へ向かって背中のシートを斜めに絞り込む』というベクトルの解像度を持って初めて、的確なフォームの修正指示が出せるようになります」。文字情報として覚えた知識と、三次元の身体構造との間に生じるギャップをいかに埋めるかが、現場での評価を二分しています。