人工授粉を成功させるための大前提となるのが、雄花と雌花の形態的見分けです。両者の差異は花弁の下部を見れば一目瞭然です。雌花は花の根元にあらかじめ直径1〜2センチほどの小さなかぼちゃのミニチュア(子房)を携えて開花します。対して雄花は、細長い茎(花柄)の先に花弁だけがスッと立ち上がっており、根元に膨らみはありません。また、花の中心を覗き込むと、雄花には黄色い花粉をびっしりと纏った1本の葯(やく)があり、雌花には複数に分かれた肉厚な柱頭が鎮座しています。
見分けがついた後に立ちはだかるのが、受粉の最適な時間帯という極めてシビアなタイムリミットです。かぼちゃの花粉は、開花を迎える早朝に最も高い受精能力を誇ります。具体的には、日の出直後から午前8時前後(遅くとも午前9時まで)が勝負の黄金時間帯となります。
かぼちゃの花粉は熱に極めて弱く、気温が25℃を超えて上昇すると急速に活性を失い、花粉の寿命が尽きてしまいます。午前10時を過ぎてから受粉作業を行っても、見た目には花粉が付着しているように見えますが、細胞レベルではすでに失活しており、受精に至る確率は急降下します。朝露が残り、気温が上がりきる前の涼しい時間帯に作業を完了させることが鉄則です。