ガラガラと引き戸を開けると、壁一面に貼られた手書きの短冊メニューが目に飛び込んでくる。年季の入った短冊の黄ばみとは裏腹に、厨房から漂う空気はピンと張り詰めている。昔ながらの大衆食堂が次々と姿を消していく昨今、この場所だけは別次元の活気に満ちている。
移り変わりの早い外食産業では、効率化や省人化が急速に進む。しかし、この店が頑なに守り続けているのは、注文を受けてから肉を切り、強火で一気に仕上げる手仕事の迫力だ。湯気とともに供される定食は、決して華美ではない。だが、炊き立ての米粒が放つ光沢や、自家製ぬか漬けの深い発酵香は、手間暇を惜しまない職人の誠実さを物語っている。