認知心理学や教育社会学の観点からさかなクンのキャリアを分析すると、極めて興味深い教訓が浮かび上がります。彼は幼少期から「魚が好き」という純粋な内発的動機に従って知識を蓄積し、やがて東京海洋大学客員教授にまで上り詰めました。サックスの習得プロセスも、この「フロー体験(完全にのめり込む心理状態)」の延長線上にあります。
大人が新しい趣味やスキルを身につけようとする際、「何歳までにマスターしなければ」「仕事の役に立てなければ」という功利主義的なプレッシャーが挫折の引き金になりがちです。しかし、さかなクンにとってサックスは「水槽と勘違いした」という偶然の出会いから始まり、「ただ音を鳴らすのが楽しい」という純粋な好奇心だけで数十年間奏で続けられてきました。
「好きを突き詰める力」は、異なる分野へも驚くほど綺麗に転移します。魚の微細な鱗の並びや生態を見抜く観察眼は、楽器の音色のニュアンスやアンサンブルの微小なズレを聴き分ける耳の感度と根底で直結しています。何かに夢中になれる人間は、別の領域でも一流の集中力を発揮できる――彼のサックスの音色は、学びの本質を私たちに教えてくれています。