将棋中継やSNSのタイムラインで時折駆け巡る「藤井聡太がひふみんアイを炸裂させた」というトピック。その実態を日本将棋連盟の公式棋譜中継や現地記者の取材記録から紐解くと、ファンの期待と視覚的インパクトが生み出したユニークな事実関係が浮かび上がります。
真相を簡潔に言えば、藤井聡太が対局相手の真後ろに堂々と回り込んで相手の肩越しに盤面を覗き込むという、加藤一二三九段がかつて見せた純正のスタイルを実行したことは一度もありません。噂の直接の火種となったのは、タイトル戦などの重要対局で見せる「離席時の立ち見盤面チェック」です。
藤井聡太は長考に沈む際、しばしば席を立ち、数歩離れた位置から立ったまま盤面全体を俯瞰します。対戦相手の手番中、下座や部屋の斜め後方から腕を組んで盤面を見下ろすシルエットが、定点カメラの画角によって「相手側から盤面を覗き込んでいる」ように映り込んだ場面が複数回ありました。ネット中継の視聴者がこれを目撃し、「あれは令和のひふみんアイではないか」と面白がって拡散したことが噂の発端です。
また、練習将棋や控室の研究会において、検討陣が盤の周囲を囲んで相手側視点から局面を検討する光景は日常茶飯事です。幼少期の藤井聡太が詰将棋を解く際や、奨励会時代に対局相手の視界を意識して席を外したエピソードなどが混ざり合い、「公式戦でひふみんアイを完全再現した」という誇張された言説へと昇華していきました。