ブラフ・シューペリアが「幻の名車」と呼ばれる大きな要因は、その希少性にある。1919年から第二次世界大戦の勃発によって兵器工場へ転換を余儀なくされた1940年までの約21年間に、工房全体で生産された全モデルの総数は約3,048台。その中でもフラッグシップであるSS100の生産台数はわずか数百台程度に過ぎない。現存が確認されている個体は世界でさらに限られており、クラシックカー・ヴィンテージバイク市場におけるコレクターズアイテムの頂点に君臨している。
ボナムズ(Bonhams)やRMサザビーズといった国際的オークションハウスにおいて、SS100が出品されるたびに天文学的な数字が記録される。2010年代以降、素性の確かな個体はコンディションに応じて5,000万円から1億円前後の価格帯で競り落とされるのが通例化。さらに、未レストアのまま納屋で数十年間眠り続けていた、いわゆる「バーンファインド(Barn Find)」の極めて初期のオリジナル個体には、3億円を超える評価額が付けられた事例すら存在する。
現在、残存するオリジナルのヴィンテージSS100は個人蔵のガレージや空調管理されたプライベートミュージアム、英国の国立モーターサイクル博物館などに収蔵されている。もはや単なる二輪車の枠組みを飛び越え、インフレヘッジとしての現物資産、あるいは近代インダストリアルデザインの至宝として国際金融筋からも監視される存在となっている。