「初段の筆記なんて名前を書けば受かる」「落ちる人など見たことがない」という根拠のない噂を信じ込み、十分な準備をせずに会場へ向かう受審者は少なくありません。しかし、各都道府県の剣道連盟関係者の証言や審査現場の記録を紐解くと、筆記試験での不合格は決して都市伝説ではないという現実が浮かび上がります。
筆記審査で不合格判定を受ける主な理由は、知識の深さそのものよりも、極めて初歩的なケアレスミスや審査形式に対する認識不足に起因しています。現場の指導者への取材から見えてきた典型的な不合格パターンは、以下の通りです。
第一に挙げられるのが「指定文字数の未達および白紙回答」です。時間が足りなくなった、あるいは設問の意味が分からず途中で筆が止まってしまい、解答欄の半分以上を空白のまま提出したケースでは、審査員が採点しようにも救済の余地がなくなります。審査基準において「記述の充実度」は基本要件であり、空白は理解度ゼロと判定される最大の要因です。
第二に「設問に対する論点のズレ(問いに答えていない)」です。例えば「気剣体一致について説明せよ」と問われているのに対し、単に「気合いを出して打つことが大切」といった情緒的な感想文を書いてしまうケースです。審査員が求めているのは、気(気力・意志)、剣(竹刀の刃筋・打突部)、体(体さばき・踏み込み)の3要素が一致して初めて有効打突になるという構造的な理合の理解です。
さらに、近年主流となっている「事前レポート提出方式」における「提出忘れや規定違反」も深刻なトラブルとなっています。審査日当日に持参し忘れる、指定用紙以外の紙を使用する、指定の文字数制限(概ね300〜400字程度)を無視するといった手続き上の不手際により、実技を受ける前に失格となる受審者も報告されています。