極限のプレッシャーがかかる五輪の舞台では、自らのメダル獲得や勝利よりも他者への敬意を優先した瞬間に、世界的な称賛が集まります。国際フェアプレー委員会(CIFP)が表彰してきた歴史には、今なお語り継がれる奇跡的な振る舞いが記録されています。
代表的な事例として知られるのが、1964年東京五輪のセーリング(ヨット)競技フライングダッチマン級に出場したスウェーデン代表のラルス・グンナー・シェルヴェとスティグ・セルベルグの行動です。強風吹き荒れる相模湾で上位を帆走していた彼らは、突風で転覆し海中に投げ出されたオーストラリア艇の選手2名を発見しました。自らのメダル争いを完全に放棄して救助に向かい、低体温症の危機にあったライバルを海から引き揚げたのです。この献身的な振る舞いに対し、ユネスコと設立直後の国際フェアプレー委員会は、彼らに史上初となる「ピエール・ド・クーベルタン国際フェアプレー賞」を授与しました。
また、近年のオリンピック感動エピソードとして記憶に新しいのが、2016年リオデジャネイロ五輪の女子5000メートル予選です。レース中に前走者の転倒に巻き込まれ、激しく倒れ込んだニッキー・ハンブリン(ニュージーランド)とアビー・ダゴスティノ(アメリカ)。立ち上がれない相手に対し、ダゴスティノは「立って、ゴールしよう」と肩を貸し、膝を痛め苦悶するダゴスティノを今度はハンブリンが励ましながら共に完走を果たしました。競技結果を超えたその姿は、五輪精神の体現として世界中のメディアでトップニュースとして報じられました。
これらフェアプレイ具体例まとめの数々やフェアプレイ賞歴代受賞者の記録が証明しているのは、観衆の記憶に永遠に刻まれるのはメダルの色だけではなく、追い込まれた極限状態で見せた「人間性の輝き」であるという厳然たる真実です。