ネット上やSNSでは、乳幼児期からのセルフねんねを促す「ネントレ(ねんねトレーニング)」が広く推奨されています。「赤ちゃんの頃から一人で寝かせないと自立心が育たない」「欧米では添い寝などあり得ない」といった極端な言説を目にし、添い寝を続けている自分を責めてしまう親は少なくありません。しかし、ここには重大な文化的・住環境的文脈の脱落があります。
日本小児保健協会などの知見でも指摘されている通り、欧米における単独就寝の慣習は、住居の広さや夫婦の寝室文化、歴史的な背景に基づいたものです。一方、日本の伝統的な「川の字」に代表される添い寝文化は、子どもの情緒的安定やオキシトシンの分泌を促し、親子の愛着形成(アタッチメント)を強固にする確かなメリットを持っています。
ネントレ成功のコツとして語られるメソッドを、日本の住宅環境や子どもの気質を無視して無理に適用すると、強いストレス反応を引き起こすリスクがあります。「添い寝をしているから自立が遅れる」という言説には科学的根拠がありません。むしろ、夜間に親の十分な愛情と安心感を享受した子どもほど、思春期以降に情緒が安定し、自立的な人間関係を築きやすいという発達心理学の調査結果も存在します。