アニメ版『ポケットモンスター』におけるオーキド博士の魅力を決定づけたのは、威厳とユーモアを絶妙に兼ね備えたその「声」でした。1997年の放送開始から21年間にわたりオーキド博士、そして作品の語り部であるナレーションを担当したのは名優・石塚運昇さんです。低く包容力のあるバリトンボイスで語られる「ポケモンゲットだぜ!」や、本編終わりの「オーキド博士のポケモン川柳」は、平成の子供たちにとって毎週の安心感そのものでした。
しかし2018年8月、石塚運昇さんが食道がんのため急逝するという悲報が世界中を駆け巡りました。世界規模のメガヒット作品において象徴的なキャラクターの声を誰が引き継ぐのかが極めて重大な局面となる中、白羽の矢が立ったのが堀内賢雄さんでした。堀内さんは『サン&ムーン』シリーズの第93話以降、オーキド博士役およびナレーションを正式に担当することになりました。
堀内さんは生前の石塚さんと公私にわたり深い親交があり、業界内でも互いを認め合う盟友関係でした。交代当初、堀内さんは「運昇さんが築き上げたオーキド博士の温かみとリズムを絶対に壊してはならない」という並々ならぬ敬意を持って収録に臨んだと当時の関係者インタビューで明かされています。その声は単なる物まねに留まらず、石塚さんの魂を宿した重厚さと、堀内さんならではの軽妙洒脱なニュアンスが見事に融合し、2026年現在のファン層からも「最も誠実で完璧な継承」と絶賛されています。