「ドジャースは金に物を言わせて他球団のスターを略奪しているだけだ」――ネット上で頻繁に飛び交うこの批判には、決定的な事実誤認が含まれています。取材を通じて見えてくるのは、ドジャースの真の強みは資金力そのものではなく、「選手再生工場」と呼ばれる高度な育成・データ解析インフラにあるという点です。
実際、ドジャースが近年獲得した投手や野手の多くは、他球団で戦力外(DFA)となったり、成績が低迷してトレード市場で買い手がつかなかったりした選手たちです。球団は最新鋭のトラッキングシステム(ホークアイ)と自前のバイオメカニクス研究所を駆使し、投球フォームのリリースポイントのブレや球種配分を数ミリ単位でミリタリースペック並みに再設計します。他球団が見落とした「眠れる才能」を発掘し、即座にトップレベルのパフォーマンスへ引き上げる能力こそが、ドジャースの屋台骨なのです。
莫大な資金は、完成されたスター選手を囲い込むためだけでなく、こうしたアナリスト、フィジカルセラピスト、栄養士といった「裏方と先端設備への投資」に惜しみなく注がれています。資金があるから勝てるのではなく、勝てる組織のシステムを構築した結果として資金が集まるという因果関係を見誤っては、現代MLBの構造を正しく理解することはできません。