ネット上の言説や一般的なニュース報道を見ていると、「久常涼は下部ツアーから欧州、そしてPGAへとトントン拍子に駆け上がったシンデレラボーイ」という印象を持たれがちです。しかし、この見方は決定的な事実を見落としています。
プロ転向を果たした2020年は、世界的なコロナ禍に見舞われた最悪のタイミングでした。試合数が激減し、プロとしてのスタートラインに立つことすら困難な状況のなか、久常は出場権のあった2021年の国内下部「ABEMAツアー」で年間3勝を挙げて賞金王を獲得。泥臭く一歩ずつ道を切り拓いたのが真の実態です。
さらに過酷だったのは、欧州DPワールドツアーへの参戦初年度です。移動距離は地球数周分におよび、文化も気候も食事も異なる数十カ国を毎週のように転戦する生活は、屈強な欧米のプロですらメンタルを消耗させます。宿泊先のトラブルや飛行機の遅延、一人きりで食事を摂る孤独な日々のなかでも、久常は「世界で戦えること自体が楽しい」と周囲に語っていました。所属契約を結ぶSBSホールディングスをはじめとするスポンサー各社への感謝を常に忘れず、過酷な環境を成長の糧へと変換できるタフネスこそが、現在の躍進を支える真の要因です。