国内には世界的に見ても突出した酸性度を誇る湖沼が存在します。「日本一の酸性湖」の称号は、計測される指標(塩酸系か硫酸系か、平均値か瞬間最大値か)によって議論が分かれるものの、代表的な3つの湖沼がトップランカーとして挙げられます。
筆頭は、群馬県・草津白根山の山頂に位置する湯釜(ゆがま)です。かつての定常観測データではpH1.0〜1.2という、胃液や希塩酸に匹敵する驚異的な数値を記録しました。水面は溶存鉄イオンや硫黄微粒子によって神秘的なエメラルドグリーンを呈しますが、直接触れれば皮膚がただれ、金属製品は急速に腐食する極限の水質です。
これと並び称されるのが、宮城県大崎市の鳴子温泉近くに位置するカルデラ湖、潟沼(かたぬま)です。過去の調査において湖面全域でpH1.4という無機硫酸性の驚異的な記録を残し、学術文献において「世界最強レベルの酸性湖」として幾度も引用されてきました。現在の潟沼は湖底からの噴気活動の変動によりpH2.0前後で推移する日も見られますが、単なる火口直結の小溜まりではなく、周囲3キロメートルを超える本格的な湖としては群を抜く酸性度を維持しています。
さらに山形県と宮城県の境にそびえる蔵王連峰のシンボル、御釜(お釜)も外せません。こちらは現在pH3.5前後を記録しており、気象条件や太陽光の差し込む角度によって湖面の色が幾重にも変化することから「五色沼」の異名を持ちます。