料理本やネットレシピで長年語り継がれてきた「ナスの調理常識」の中には、現代の流通環境や品種改良において見直されつつあるものが複数存在します。
誤解①:「ナスは必ず10分以上水にさらしてアク抜きをしなければならない」
結論から言えば、現在スーパーで流通している新鮮なナスはエグみが極めて少なく、加熱調理する場合は長時間の水さらしは原則不要です。むしろ、水に長く浸けすぎると、ナス特有の紫色の色素成分であり強力な抗酸化作用を持つポリフェノール「ナスニン」が水中に溶け出してしまいます。また、余分な水分を吸ったナスは加熱時に油ハネを起こしやすくなるというデメリットもあります。切り口の変色を防ぎたい場合でも、切った直後に調理するか、水にサッと1〜2分くぐらせてペーパーで水気を完全に拭き取るだけで十分です。
誤解②:「皮はそのままでも十分に火が通る」
ナスの皮はセルロース(食物繊維)が強固に結合しているため、熱や調味料を通しにくい性質があります。皮の表面に深さ2ミリ程度の細かな格子状の切り込み(隠し包丁)を入れるだけで、火の通りが約2倍早くなり、噛んだ瞬間に中から旨味エキスが溢れ出す料亭のような口当たりが生まれます。この一手間をかけるかどうかが、プロの味と素人の味を分ける決定的な境界線となります。