インターネット上や週刊誌報道では「安倍氏は教団の信者だったのではないか」「影で操られていたのではないか」という極端な言説が散見されますが、警察の捜査資料や歴代秘書への聴取において、安倍晋三氏自身が旧統一教会の教義を信仰していた事実を示す客観的証拠は一切存在しません。実態は信仰による結びつきではなく、高度に実利的な「選挙互助・イデオロギー利用の政治的パートナーシップ」でした。
双方が接近した背景には、明確なギブ・アンド・テイクが存在していました。教団側は元首相という最高峰の政治的権威を利用して自らの社会的信用を高め、信者獲得や高額献金への批判をかわす「広告塔」としての価値を求めていました。一方、政治家側は、国政選挙で当落線上にいる候補者を確実に押し上げるための「規律ある組織票」と、ポスター貼りや電話かけを無償で担う献身的な運動員を確保できる利点を見出していたのです。
関係の端緒は第一次政権期にも確認されています。2006年、官房長官在任中の安倍晋三氏が旧統一教会の関連団体である天宙平和連合(UPF)の合同大会へ祝電を送付した事実は、当時から一部メディアや霊感商法被害対策弁護士連絡会によって厳しく追及されていました。弁護士会は再三にわたり抗議文を送付しましたが、政治家側は「儀礼的な対応」として処理し、その後も水面下での接点を完全に断ち切ることはありませんでした。
すなわち、安倍氏と旧統一教会の関係とは、一方的な侵食でも教義への傾倒でもなく、「霊感商法や高額献金といった反社会的リスクを把握しながらも、選挙戦の利便性と政治的発信力を優先して看過し続けたプラグマティズム(実利主義)の産物」であったと結論づけられます。