敷地の中核をなす紀尾井タワーは、日本の不動産開発・都市再生産業における一つの到達点といえる。オフィス、レジデンス、ホテル、そして商業ゾーンが見事な調和を見せる複合商業施設としての骨格が、ここにはある。
低層部に広がるテラスエリアを歩くと、かつて大名屋敷が立ち並んでいた江戸の歴史の起伏がそのままランドスケープに活かされていることに気づく。オフィスワーカーが足早に行き交う平日の昼下がりであっても、水のせせらぎと鳥の声がビル風を和らげる。働く場と憩う場、そして暮らす場が分断されることなく共鳴し合う都市のマイクロコズム。この精緻なエコシステムこそが、十年を経てもなお色褪せない価値を生み出し続けているのだ。