なぜここまで実戦向きではない技が、これほど世界中で愛され、強烈な強技として認知されているのでしょうか。その発祥と元ネタの歴史を紐解きます。
ストリートファイターにおける「対空要塞」としてのガイル
サマーソルトキックを世界中に定着させた最大の功労者は、1991年に稼働した『ストリートファイターII』に登場する米空軍少佐「ガイル」です。ゲーム内におけるサマーソルトキックのコマンドは「↓タメ↑+キック」。しゃがんで守りを固めながらパワーを蓄積し、相手が飛び込んできた瞬間に真上へ跳躍して迎撃するというシステムでした。
発生の早さと技の出始めに付与された「完全無敵時間」によって、相手のジャンプ攻撃を一方的に打ち落とす圧倒的な対空性能を誇りました。この「待ちガイル」と呼ばれるプレイスタイルがゲームセンターを席巻したことで、「サマーソルトキック=難攻不落の迎撃必殺技」という強固なパブリックイメージが完成したのです。
プロレスにおける元ネタと発展の系譜
ゲーム以前におけるサマーソルトキックのルーツは、体操競技の宙返り技(英語で宙返りを意味する「Somersault」)と、プロレスリングにおける空中殺法にあります。
1980年代、初代タイガーマスク(佐山聡)をはじめとするジュニアヘビー級のレスラーたちが、コーナーポストやロープの反動を利用した「サマーソルトドロップ」や華麗な後方宙返りアクションをリングに導入しました。相手にダメージを与えるだけでなく、「観客を熱狂させるアクロバット」として昇華されたプロレス文化が、カプコンをはじめとするゲームクリエイターたちに多大なインスピレーションを与えたとされています。