この特異な言葉は一体どこから生まれたのか。最も有力視されている説の一つが、江戸時代前期の見世物小屋に登場した「へらぼう」という異形の見世物だ。頭が異常に大きく長円形で、まるで瓢箪(ひょうたん)のような奇妙な顔立ちをした男が人気を博し、見物客はその滑稽で奇妙な姿を愛嬌を込めて面白がったとされる。
「たわけ」や「へちま」といった言葉と同様、見た目の異様さや滑稽さがそのまま「愚か者」の蔑称へと変化したというプロセスだ。やがて濁音化して「べらぼう」へと変化し、人々の口の端に上るようになった。言葉の裏に透けるのは、歪なものを排除するのではなく、見世物として面白がり、日常の笑いに変えてしまう江戸歌舞伎や見世物文化のたくましい包容力である。