現在でもソーシャルメディア上では、ビョルン・アンドレセンの若い頃の写真が定期的に拡散され、数万件規模のリポストを集める現象が続いています。1970年代初頭、金髪をなびかせ、憂愁をたたえた青い瞳で佇む少年の姿は、日本の少女漫画文化にも多大な影響を与えました。『ベルサイユのばら』のオスカルや、『風と木の詩』のジルベールなど、昭和から平成を代表する耽美的なキャラクター造形の直接のインスピレーション源となったことは公知の事実です。
しかし、ネット上で「神が創造した奇跡」「二次元から抜け出してきた美貌」と称賛される一方で、当事者の現実は地獄そのものでした。2021年に公開されたドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』(クリスティーナ・リンドストロム、クリスティアン・ペトリ共同監督)では、カンヌ国際映画祭の記者会見でヴィスコンティ監督から「彼はもう美少年ではない(成長して価値が落ちた)」と公然と侮辱された場面や、同性愛者のナイトクラブに連れ回され、富裕層の愛玩物として扱われた生々しい事実が本人の口から語られています。
日本でも大ブームとなり、明治製菓(現・明治)のチョコレートCM出演や日本語でのレコード発売など、多忙を極める芸能活動を強いられました。言葉も通じない異国で熱狂的な歓声に晒され、精神安定剤を処方されながら笑顔を作らされていた少年の孤独は想像を絶します。ネット上の映画コミュニティでも、このドキュメンタリーと『ミッドサマー』を併せて鑑賞したユーザーから、深い反省と共感の声が相次ぎました。
「ミッドサマーのあの壮絶な死に様は、美しさだけを搾取し続けた世界に対するビョルンなりの復讐であり、決別だったのではないか」「若い頃の美貌ばかりが語られるけれど、老境に達した彼の表情にこそ、人間としての本質的な凄みが宿っている」といった考察は、彼のキャリアに対する再評価の潮流を象徴しています。