長きにわたり沈黙を守り続けてきた十朱幸代さんが、この大恋愛の真実を公にしたのが、2018年10月に発表された自叙伝『愛し続ける私』(集英社)でした。同著は、同年5月16日に西城秀樹さんが急性心不全のため63歳で急逝した約5か月後に出版されたため、大きな波紋を呼びました。
一部では「逝去に便乗した暴露本ではないか」という心ない声も上がりましたが、実際には西城さんが存命の時期から長期間にわたり準備されていた回顧録でした。著書の中で、十朱さんは実名こそ出さず「彼」という表現にとどめながらも、誰が見ても西城さんであるとわかる克明な筆致で、当時の心情を吐露しています。
自叙伝の中で特に読者の胸を締め付けたのは、「別れを切り出した夜」の描写でした。十朱さんは自宅マンションを訪れた西城さんに対し、静かに、しかし断固たる決意で別れを告げました。「あなたが望むような家庭の妻にはなれない」「あなたの未来や家族を奪うことはできない」という告白に対し、西城さんは激しく動揺し、涙を流して引き止めたといいます。しかし、十朱さんはその背中を押し、二度と振り返ることなく扉を閉ざしました。
身を引き裂かれるような別れを選びながらも、十朱さんは同著のタイトル通り「心の中で彼を愛し続けていた」と告白しています。結婚という形にはならなかったものの、西城さんと過ごした日々は、女優・十朱幸代の人生においてもっとも光り輝いた真実の時間であったことが、凛とした文章から伝わってきます。