「冬場になると、どこで切ったのか心当たりがないと言って来院される患者さんが実際にいます」。都内の皮膚科医はそう語る。特に乾燥した冷たいビル風が吹き荒れる季節、あかぎれの悪化や、風にあおられた紙片・繊維による浅い切創が多発するという。
乾燥で皮膚のバリア機能が落ちた角質層は、私たちが思う以上に脆い。微細な繊維や乾いた枯れ葉が高速で接触しただけで、まるで剃刀を当てられたように裂けることがある。患者は「歩いていただけで急に痛くなった」と口を揃える。現代医学の言葉で説明されればただの偶発的な外傷だが、街灯のない暗闇の街道を歩いていた昔の人々が、そこに妖怪の影を見たとしても何の不思議もない。