丹念に下茹でしたはずのたけのこを口にした瞬間、舌を刺すような渋みやえぐみを感じて落胆した経験を持つ方は少なくありません。料理研究家や食品科学の専門データによると、たけのこ下茹で失敗理由の大半は「加熱時間の不足」ではなく、収穫後の経過時間と茹で上がった後の温度管理にあります。
たけのこのエグみは、主にアミノ酸の一種であるチロシンが酸化して生じる「ホモゲンチジン酸」と、植物性の「シュウ酸」によって引き起こされます。たけのこは地面から頭を出して日光を浴びたり、土から掘り出されたりした瞬間から自己防衛本能としてこれらのエグみ成分を爆発的に生成し始めます。収穫から24時間が経過したたけのこのシュウ酸含有量は、収穫直後の2〜3倍以上に跳ね上がるという農林水産関連の分析データも示されているほどです。
さらに現場で頻発している盲点が、茹で上がった直後の「急冷」です。熱々のたけのこを早く冷まそうと流水にさらしたり氷水に浸けたりすると、繊維が急激に収縮し、組織内に溶け出しかけていたアク成分が内部へ閉じ込められてしまいます。たけのこエグみ取る方法の本質は、沸騰加熱によって組織を軟化させ、煮汁の熱が冷めていく過程で浸透圧を利用してアクを外へ排出・吸着させる「自然放冷」の工程にあります。