アフタヌーンティーの成否を分けると言っても過言ではないのが、スコーンの扱いです。テーブルマナーの中でも特に自己流になりがちなポイントであり、周囲の視線が集まりやすい場面でもあります。まず押さえておきたいのが、スコーンの正しい食べ方における初歩的な禁忌です。スコーンにナイフを垂直に入れ、パンのように真っ二つに切り落とす行為は、英国の伝統的マナーでは「縁起が悪い(関係を切り裂く)」と忌み嫌われます。
スコーンの中央には、焼成時にできる自然な割れ目があります。英国ではこれを「狼の口(Wolf's Mouth)」と呼びます。この割れ目に指先を添え、上下に優しく引き離すようにして手で水平に2つに割るのが正統な作法です。割った後は、決してハンバーガーのようにジャムとクリームを挟んで元に戻し、かぶりついてはいけません。割った半分のピースから、自分の「一口分」だけを手でちぎり、その都度スプレッドをのせて口に運びます。
ここで必ず話題にのぼるのが、クロテッドクリームの塗り方を巡る英国の二大流儀です。クリームを先に塗り、その上にジャムを重ねる「デヴォン州式(デヴォンシャースタイル)」と、ジャムを土台に塗り、その上に濃厚なクリームをぽってりと載せる「コーンウォール州式(コーニッシュスタイル)」が存在します。英国王室でも故エリザベス女王はジャム先(コーンウォール式)を好んだと公式記録にありますが、どちらを選んでも失礼には当たりません。大切なのは、ジャム用とクリーム用それぞれのスプーンを混同せず、自分の皿に一度取り分けてからスコーンにのせるという衛生的な配慮です。