篤志家という存在は、決して富裕層による金銭寄付だけに限定されるものではありません。日本の近代史を振り返ると、時間や身体、専門能力を無償で捧げた人々もまた篤志家と呼ばれてきました。
その代表例が、日本赤十字社の草創期に活躍した「篤志看護婦」です。戦時救護や災害支援において、身分の高低を問わず自らの危険を顧みずに負傷者の手当てに当たった女性たちの献身は、近代日本の人道支援の基礎を築きました。
現代の司法・更生行政においても、民間のボランティアとして法務大臣から委嘱される「篤志面接委員」が重要な役割を果たしています。篤志面接委員は刑務所や少年院などの矯正施設を定期的に訪問し、被収容者の悩み相談や宗教・文化活動の指導を行い、社会復帰を精神面から支援します。財力のみならず、人間愛と情熱を注ぐボランティアスピリットこそが、篤志家という概念の根底に流れています。