インターネット上には「夏は短く刈り上げるのが愛犬のため」「バリカンさえあれば自宅で安価に仕上げられる」といった短絡的な情報が散見されますが、これらには被毛の生理機能を無視した重大な落とし穴が存在します。
第1の盲点は、過度なショートカットが引き起こす健康被害です。ダブルコートの犬種(ポメラニアンや柴犬など)で知られる「バリカン後脱毛症」ですが、シングルコートのヨーキーであっても、毛根に熱を持たせるような短時間の強いバリカン施術や極端な深剃りを行うと、毛周期が休止期に固定され、何ヶ月も毛が生え揃わなくなるケースが報告されています。また、被毛という遮蔽物を失った皮膚は強烈な紫外線に晒され、日光性皮膚炎や体温調節機能の破綻を招きます。エアコンの冷気で内臓が冷えて下痢を起こすリスクも含め、「短くする=涼しくて快適」という図式は完全な誤解です。
第2の盲点は、家庭内での事故リスクです。トリミング代を浮かせようとヨーキー セルフカット バリカンに手を出す飼い主が増加していますが、動物病院の救急外来にはセルフカットによる裂傷事故が頻繁に運び込まれています。ヨーキーの皮膚は非常に薄く、特に脇、内股、耳の縁、足裏の肉球の間は皮膚がたるみやすいため、バリカンの刃先がわずかに引っかかっただけで大きく皮膚が裂けて縫合手術に至る事例が後を絶ちません。自宅でのケアはブラッシング、目元の毛の拭き取り、爪ヤスリ程度に留め、刃物を皮膚に当てる作業はプロに委ねるべきです。
第3の盲点は、伝統的なスタイルへの憧憬と現実のギャップです。床まで流れる優美なヨークシャーテリア フルコート 手入れ方法を調べて挑戦しようとする愛好家もいますが、ドッグショーレベルのコートを維持するには、日々の徹底したブラッシングだけでなく、被毛を傷めないためのラッピング(毛束を専用のペーパーで包んで輪ゴムで留める処置)を全身に施し、数日おきに巻き直す熟練の技術が必要です。服を着せるだけで摩擦による巨大な毛玉が形成されるため、アクティブに散歩やドッグランを楽しむ家庭犬にとっては、運動制限によるストレスという代償を伴うのが実態です。