行司の世界には明確な階級制度が存在する。序ノ口から始まり、序二段、三段目、幕下、十両、幕内、三役、そして頂点に君臨する「立行司」である「式守伊之助」と「木村庄之助」へ。式守伊三郎という名跡は、まさにこの最高峰へと昇り詰めるための重要な試練の場であり、中堅から上位へとステップアップする名門の証であった。
立行司に昇進した名行司の中には、伊三郎時代に研鑽を積んだ者が少なくない。土俵上での度胸、力士への目配り、そして土俵下の大将格である審判委員との絶妙な連携。伊三郎の時代に培われた圧倒的な現場感覚が、のちに最高峰の軍配を握るための揺るぎない土台となった。名跡の重みは、昇進を目指す行司たちの背中を常に押し続けてきたのである。