慶應義塾の象徴であるペンマークの起源は、言論の力を重んじた福澤諭吉の教えに由来する。「ペンは剣よりも強し」という西洋の格言を具現化したクロスしたふたつのペン先は、暴力や権力に対抗する学問の尊厳を象徴している。この無駄を削ぎ落とした幾何学的な構成は、近代日本の黎明期において先進的な合理性を体現していた。
対する早稲田大学の稲穂の紋章は、創設者である大隈重信の出身地・佐賀の早稲田田んぼや、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の教訓に深く結びついている。19文字の稲穂の粒が示しているのは、学問の成熟と謙虚さの理想像だ。偉大な指導者たちの美学と人間観が、そのまま後世へ受け継がれる視覚的レガシーとなっている。