「水虫=耐えがたいかゆみ」という先入観が、かかとの角化型水虫の発見を遅らせる最大の障壁となっています。なぜ、かかとの水虫はかゆみを引き起こさないのでしょうか。
医学的な機序を紐解くと、かゆみとは白癬菌そのものが発する毒素ではなく、菌を排除しようとして生体が起こすアレルギー性の炎症反応です。足の指の間や土踏まずは角質層が比較的薄く、免疫細胞が存在する表皮下層や真皮に白癬菌が接近するため、強い炎症とヒスタミンの放出が起こり、激しいかゆみや水疱が生じます。
一方、かかとの角質層は体重を支えるために通常の皮膚の10倍〜20倍以上(約1〜2mm以上)の厚みを持っています。白癬菌はこのぶ厚い角質層のケラチンタンパク質を餌にして奥深くへ潜り込みますが、真皮の免疫センサーから距離があるため、生体が炎症反応を起こしにくくなります。その結果、神経が刺激されず、「かゆみが一切生じない」という特殊な病態が完成するのです。
さらに、角化型水虫に対して一般的な保湿クリーム(ワセリンやヘパリン類似物質など)を塗り込んでも治らない理由は極めて明確です。保湿剤は皮膚の水分蒸発を防ぐバリアに過ぎず、真菌を殺滅する殺菌力・静菌作用を一切持たないからです。むしろ、角質内部に適度な水分と温熱環境を提供してしまい、白癬菌の増殖を後押ししてしまうケースすら存在します。