名門・聖心女子大学文学部英語英文学科を卒業した眞野あずさは、才色兼備の令嬢女優として芸能界に足を踏み入れました。大学卒業直前の1980年、NHK連続テレビ小説『風の鳴る国から』のオーディションを経て、同年ドラマ『幸福』で本格デビュー。翌1981年の『野々村病院物語』で脚光を浴び、映画『道頓堀川』などに出演して着実に女優としてのキャリアを築いていきました。
しかし、デビュー当初から彼女の前には「真野響子の妹」という巨大な看板が常に立ちはだかっていました。姉の響子は既に映画や大河ドラマで主演級の活躍を収めており、マスコミ各社は常に二人を比較しました。当時の週刊誌では姉妹のライバル関係や不仲説がセンセーショナルに書き立てられたこともあります。
だが二人の姉妹関係の実態は、不毛な嫉妬ではなく、互いの領域を侵害しない大人の距離感でした。心理学でいう「心理的バウンダリー(境界線)」を厳格に引き、姉は芸術性の高い舞台や文芸作へ、妹のあずさは2時間ドラマを中心とするエンターテインメントの王道へと、それぞれ異なるフィールドを開拓したのです。
テレビ朝日の『検事・朝日奈耀子』シリーズ(全19作)では、医師免許を持つ異色の女性検事役を熱演。TBSの『弁護士・高見沢響子』シリーズ(全12作)では、DVや少年犯罪などの社会問題に立ち向かう人権派弁護士役を見事に演じ分けました。知性と気品を兼ね備えたその佇まいは、サスペンスドラマ黄金期における唯一無二のブランドを確立させたのです。