『ヒロイン』がバンドの代表作へと飛躍した背景には、二つの決定的な契機が存在します。一つは、冬のカルチャーを象徴する大型タイアップへの抜擢、もう一つは日本ポップス界の巨匠との邂逅です。
本作は、当時若手女優として圧倒的な透明感を放っていた広瀬すずが出演した「JR SKISKI」(2014-2015年シーズン)のCMソングとして書き下ろされました。「答えは雪に聞け。」というキャッチコピーとともに、ゲレンデで雪にまみれながら揺れ動く青春の情景を鮮烈に演じたCM映像と、back numberの哀愁を帯びたメロディが完璧なシナジーを生み出し、当時の若者文化を席巻しました。
サウンド面における最大のトピックは、Mr.ChildrenやMy Little Loverなどを手掛けてきた名プロデューサー・小林武史によるプロデュースとアレンジです。当時の音楽関係者の証言や特番インタビューによると、清水依与吏が持ち込んだアコースティックギターのデモ音源に対し、小林武史はストリングスとピアノを大胆に重ねるアレンジを施しました。
ロックバンド特有の泥臭さと、小林武史が得意とする緻密で洗練された冬の空気感が融合したことで、back numberの叙情性は一気にスケールアップを遂げ、単なるインディー発のロックチューンを超えた国民的ウインターバラードへと昇華されました。