キャスト陣の経歴を紐解くと、その多様性に驚かされる。戸田恵子はもともと歌謡曲の歌手としてデビューし、その後劇団の看板女優として舞台やドラマで実力を磨いた異色の経歴を持つ。その豊かな表現力と滑舌の良さが、アンパンマンという唯一無二のヒーロー像を確立させた。
また、同作の現場では「1人の声優が複数のキャラクターを演じ分ける」という驚異的な技が日常的に行われている。代表例が山寺宏一で、チーズやカバお、かまめしどんなど、声質も性格も全く異なる役柄を一瞬で切り替えて演じ分ける。アニメーション業界全体を見渡しても、これほどの精度で複数役をこなす現場は極めて稀だ。声優たちの超絶技巧が、作品の密度とコミカルなテンポを支えている。