打撲や強い圧迫を受けた直後から襲ってくる激しい拍動痛は、爪特有の解剖学的構造に起因しています。爪の下(爪床)には毛細血管と神経が密に張り巡らされていますが、その上部は硬い爪甲、下部は末節骨(指の骨)という強固な組織に挟まれています。
内出血が起きると血液の逃げ場がないため、爪の下の内圧が急激に上昇します。この高まった圧力が神経終末を直接刺激し続けるため、心臓の鼓動に合わせて「ズキズキ」と激しく痛む状態が生じます。特に足の親指は体重がかかるうえ毛細血管が太いため、圧迫による内出血量が膨らみやすく、歩行困難を伴うほどの苦痛をもたらします。
「たかが爪の内出血」と爪下血腫を放置する危険性として以下の3点が挙げられます。
- 爪床・爪母の血流障害と変形:高圧状態が続くと爪を作る爪母組織が虚血状態に陥り、将来的に生えてくる爪が凸凹になったり二枚爪になったりする後遺症を残す恐れがあります。
- 細菌感染(爪周囲炎・骨髄炎):内出血で溜まった血液は細菌にとって格好の培地です。小さな傷口から黄色ブドウ球菌などが侵入すると化膿し、最悪の場合は骨にまで炎症が及ぶ骨髄炎を引き起こします。
- 骨折の見落とし:強い外傷による爪下血腫の約15〜20%に末節骨骨折が合併しているという臨床データがあり、単なる打撲と侮ると骨の変形癒合を招く恐れがあります。