急に目が見えなくなる原因と前兆|片目暗転・視野欠損時の受診目安

急に目が見えなくなる原因と前兆|片目暗転・視野欠損時の受診目安

急に目が見えなくなる原因と前兆|片目暗転・視野欠損時の受診目安に関する最新の話題を分かりやすく解説いたします。

視覚の喪失が短時間で元に戻った場合、胸をなでおろして受診を見送る人が後を絶ちません。しかし、この「一時的な消失」こそが最も警戒すべき臨床所見です。

目が見えなくなる一瞬暗くなる現象の代表例が「一過性黒内障(Amaurosis fugax)」です。これは、頸動脈の内壁に生じた動脈硬化プラーク(コレステロールの塊)の一部が剥がれ落ち、微小塞栓として網膜動脈に流れ込んで一時的に血流を遮断することで引き起こされます。詰まった微小血栓が自己融解したり下流へ押し流されたりすると、数分から長くとも15分程度で血流が再開し、視界は何事もなかったかのようにクリアに戻ります。

医学的に極めて恐ろしいのは、急な視力低下は脳梗塞の前兆として機能している事実です。臨床調査研究の報告によると、一過性黒内障を発症した患者の約10〜15%が90日以内に本格的な虚血性脳卒中を発症し、そのうちの半数は発症から48時間以内に発症しているというデータが存在します。目が見えるようになったからといって病巣が消えたわけではなく、首の血管から脳へ向けていつ巨大な血栓が飛び火してもおかしくない状況が続いています。

一方、よく混同される症状として閃輝暗点と偏頭痛の違いが挙げられます。閃輝暗点は、脳の後頭葉にある視覚野の血管が異常収縮・拡張することによって引き起こされます。視界の中にギザギザとしたノコギリ状の光や万華鏡のような幾何学模様が現れ、視野の端に向かって波紋のように広がりながら見えにくくなり、通常20〜30分程度で自然に消失します。典型的な若年〜中年層の片頭痛では、この光が消えた直後にズキズキとした激しい拍動性の頭痛が追いかけてきます。

注意すべきは、「頭痛を伴わない閃輝暗点」です。中高年以降になって初めて光のギザギザだけが現れ、その後に頭痛が起きないケースでは、片頭痛ではなく脳血管の狭窄や微小脳梗塞、あるいは脳腫瘍などの器質的病変が視覚中枢を刺激している疑いが高まります。「頭痛がないから軽い症状だ」という判断は医学的に正しくありません。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。