近年、デジタルリマスター版の公開やネット上の画像解析をきっかけに、本作の宣伝ポスターに関するある事実が大きな話題を呼んだ。
清太と節子が満面の笑みで無数の蛍の光に包まれている有名なメインビジュアル。この画像を明るく補正・明度調整すると、夜空の暗闇の中に米軍の大型爆撃機「B-29」の巨大な機影が浮かび上がり、二人に降り注いでいる光の粒の多くが蛍ではなく、焼夷弾(油脂焼夷弾)の火の粉であることがはっきりと確認できる。
作品タイトルの『火垂る』という文字も、単なる昆虫のホタルではなく「火が垂れる=空襲の火の雨」を意味するダブルミーニングであることは公式にも示唆されているが、ポスターという一枚の絵の中に「生と死」「無邪気な日常と容赦のない破壊」が視覚的に同居していた事実は、高畑監督の妥協なき作家性を物語っている。
また、ネット上では「節子生存説」や「二人は幽霊として永遠にあの夏をループしている」といった都市伝説も根強く語られている。映画の冒頭が現代(1980年代)の三ノ宮駅を行き交う群衆と赤い幽霊のような清太・節子の姿から始まる通り、本作は「過去の戦争体験を回顧する幽霊たちの物語」という構造を持っており、成仏できない魂の彷徨を描いているという視点は、高畑監督自身も一部肯定する演出論である。