本作が数ある中国ドラマの中でも突出した評価を獲得している背景には、映画界のトップランナー2人がテレビドラマの枠組みを超えた演技合戦を繰り広げたことが挙げられます。
主演のチェン・クンは、中国映画界の最高峰『画皮 あやかしの恋』や『ロスト・レジェンド 失われた棺の謎』などで主演を務めた国民的スター俳優です。9年ぶりのドラマ復帰作となった本作では、母を殺され幽閉されていた苦難の過去を胸に秘め、病弱で放蕩な皇子を演じ分けながら、冷徹な策士として政敵を追い詰めていく寧弈を怪演。感情が高ぶる瞬間のわずかな口元の引きつりや、知微に向ける切ない眼差しなど、緻密に計算された感情のグラデーションは圧巻の一言に尽きます。
対するヒロインのニー・ニーは、巨匠チャン・イーモウ監督の映画『金陵十三釵(The Flowers of War)』の主演で鮮烈なデビューを飾り、本作がドラマ初出演となりました。男装して朝廷の官僚「魏知」として生きる場面では、媚びのない骨太な知性を発揮し、女性としての脆さと前朝の姫としての宿命の間で葛藤する姿を情熱的に演じ切っています。
特筆すべきは、中国ドラマ界では非常に珍しい「俳優本人の肉声による現場同時録音(生音)」が採用されている点です。通常、中国の時代劇では声優による吹き替え(アフレコ)が一般的ですが、本作ではチェン・クンやニー・ニー自身の低く響く声や息遣い、緊迫した間の取り方がそのまま映像に刻み込まれており、これがドラマ全体の芸術性を格段に押し上げています。