インターネット上のQ&Aサイトなどで定期的に相談が寄せられるのが、トゲ 血管に入る 噂の真相です。「昔、親からトゲを抜かないと血管に入って心臓に刺さって死ぬと脅された」という経験談が広く定着していますが、結論から言えば、これは解剖学的にあり得ない迷信・都市伝説です。
皮膚の表面近くに走っている血管は、赤血球がようやく1列で通り抜けられる程度の直径(わずか5〜10マイクロメートル)しかない毛細血管です。肉眼で見えるサイズ(数百マイクロメートル以上)のトゲが、毛細血管の壁を破って血流に乗り、太い静脈を経由して心臓まで移動することは物理的に不可能です。大人の言い伝えは、「子供が痛がってトゲ抜きを嫌がらないよう、危機感を持たせるための方便」として定着した側面が極めて強いと考えられます。
ただし、血管に入らないからといって安心はできません。血流に乗ることはなくとも、筋肉や腱、脂肪組織の間を縫うようにしてトゲが物理的に奥へと沈んでいく「組織内迷入(めいにゅう)」は現実に起こり得ます。特に足の裏や手のひらは、歩行や物をつかむ動作によって強い圧力が常時加わるため、外に出てくるどころか、押し込まれて深部組織へ移動してしまうのです。指先の腱鞘(けんしょう)にまで細菌が波及した場合、「化膿性腱鞘炎」という手の運動機能を脅かす重篤な疾患へと発展する危険すら孕んでいます。
また、絶対に軽視してはならないのがトゲ 破傷風 感染リスクです。破傷風菌は土壌や泥、動物の糞便、錆びた金属などに広く生息する嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)です。トゲが皮膚の奥深くに刺さると、酸素の届かない環境が形成され、破傷風菌が増殖する絶好の温床となります。感染すると神経毒によって口が開かなくなったり、全身の筋肉が激しく痙攣したりし、重症例では命に関わります。日本では小児期の定期接種(三種混合・四種混合・五種混合)で抗体を獲得している人が多いものの、ワクチンの有効期間はおよそ10年とされています。20代以降の成人で追加接種を受けていない場合、屋外作業やガーデニング、錆びたワイヤー等によるトゲ刺傷は十分な警戒が必要です。