奇脈とは?吸気時に血圧が急低下する理由と心疾患・喘息の見分け方

奇脈とは?吸気時に血圧が急低下する理由と心疾患・喘息の見分け方

奇脈とは?吸気時に血圧が急低下する理由と心疾患・喘息の見分け方の具体的な内容に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。

「奇脈は手首の脈を取っていれば分かるのか」という疑問に対し、循環器救急の現場から導き出される結論は「触診のみに頼るのは危険である」という点に尽きます。

確かに、血圧低下幅が20mmHgを超えるような極度の重症例では、橈骨動脈を触知している指先から吸気のたびに脈拍が完全にフッと消える感触(脈拍触知による減弱・消失)が明瞭に伝わります。しかし、血圧低下が10〜15mmHg程度の「初期〜中等度」の段階では、脈波のわずかな減衰を人間の指先の感覚だけで客観的に検知することは極めて困難です。過信による見落としを防ぐため、アネロイド血圧計または水銀血圧計を用いた聴診法(コロトコフ音法)による正確な数値化が必須とされています。

現場で迷わず実践するための、標準的な奇脈の測定手順は以下の通りです。

  1. 患者に安静を促し、極端な深呼吸ではなく、普段通りの自然なリズムで呼吸を続けてもらう。
  2. 上腕にマンシェットを巻き、橈骨動脈拍動が消失するレベルより20〜30mmHg高くまで速やかに加圧する。
  3. 聴診器を上腕動脈に当て、1秒間に2〜3mmHg程度の緩やかな速度で減圧していく。
  4. 【第1段階の記録】:減圧中、コロトコフ音が「呼気のときだけ」断続的に聞こえ始めるポイントがある。この最初の拍動音が聞こえた瞬間の収縮期血圧値を記録する(例:128mmHg)。
  5. 【第2段階の記録】:さらにゆっくりと減圧を続けると、呼吸の全周期(吸気時も呼気時も)を通して、途切れることなく規則的に音が聞こえるポイントに到達する。この血圧値を記録する(例:112mmHg)。
  6. 【判定】:呼気時血圧と全周期血圧の差を算出する(128 - 112 = 16mmHg)。この差が10mmHgを超えている場合、奇脈陽性と確定診断する。

臨床現場の看護師や救急救命士の観察データによると、自動電子血圧計では呼吸変動による微細な音の変化をアルゴリズムがエラーとして処理してしまうケースが多いため、奇脈の厳密な評価にはマニュアル式の加圧マンシェットと聴診器の併用が最も信頼性の高いアプローチであり続けています。

山本 拓海
著者

山本 拓海

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。