美容室で頻繁に目にする「カラーリタッチ」とは、前回のカラーリングから時間が経ち、新しく生えてきた黒髪(新生毛)の部分だけをピンポイントで染め、すでにカラーが入っている既染部のトーンと自然につなげる施術を指します。いわゆる「根元染め」の専門用語です。
これに対してフルカラーとの違いは、根元から毛先まで髪全体に薬剤を塗布して色味や明るさを一新する点にあります。フルカラーが「全体の印象やトーンをガラリと変えたいとき」に適しているのに対し、リタッチは「現在の髪色や明るさを保ちつつ、根元の色ムラだけを整えたいとき」に選択するのが基本原則です。
プロの美容師がリタッチを強く推奨する最大の動機は、圧倒的な髪ダメージ軽減の理由にあります。カラー剤の仕組みは、アルカリ剤で毛髪のキューティクルを開き、酸化染料を発色させると同時にメラニン色素を脱色(リフト)する化学変化を伴います。すでにダメージを受けている毛先に何度も酸化染料を塗り重ねる「オーバーラップ現象」を回避できるため、毛髪内部のタンパク質流出やCMC(細胞間脂質)の破壊を最小限に防ぐことができます。美髪を保ちながらヘアカラーを長く楽しむための最も理にかなった防御策がリタッチなのです。