盂蘭盆の期間中、各家庭で行われる伝統的な儀礼には、先祖を迎えて送る一連の作法が定められています。
代表的な手順とスケジュールは次の通りです。
1. 8月13日(または7月13日)の夕方:迎え火
玄関先や門口、あるいは庭先に素焼きの皿である「焙烙(ほうろく)」を置き、麻の茎の皮を剥いだ「オガラ」を折って積み重ねて火を灯します。この煙と明かりを目印にして、先祖の霊が迷わずに我が家へ帰ってくるとされています。火を焚く際は風向きや周囲の可燃物に十分留意し、安全を確保した上で行います。
2. 期間中の過ごし方:精霊棚とお供え
仏壇の前に「精霊棚(盆棚)」を設け、真菰(まこも)の筵を敷き、季節の野菜や果物、故人の好物、水向け用の水鉢を供えます。ここで象徴的な役割を果たすのが、きゅうりとなすに割り箸や爪楊枝を刺して作る「精霊馬(しょうりょううま)」です。
- きゅうりの馬:足の速い馬に見立て、「あの世から一刻も早く家に帰ってきてほしい」という願いを表します。
- なすの牛:歩みの遅い牛に見立て、「名残惜しいが、供物をたくさん積んでゆっくりと安全にあの世へ戻ってほしい」という配慮を表します。
3. 8月16日(または7月16日)の夕方:送り火
迎え火と同じ場所で再びオガラを焚き、滞在を終えた先祖の霊を見送ります。京都の「五山送り火」や全国各地で行われる「灯籠流し」は、この家庭ごとの送り火が地域全体の祈りへと昇華した大規模な儀礼形態です。